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令和6年(2024年)は中止が決定しました。
市指定 無形民俗文化財
所在地:行橋市入覚
指定年月日:平成25年11月1日
入覚地区に伝わる入覚念仏楽は、旧豊前国(福岡県東部と大分県北部)周辺に伝わる楽打ち(がくうち)の1つです。九州では太鼓のことを楽と呼び、雨乞いや五穀豊穣などを祈願する太鼓踊りを楽打ちと呼んでいます。
入覚念仏楽は毎年5月3日に行われます。大人は先頭でうちわを振る楽匠(がくしょう)2人だけで、口上を述べる言立(いいたて)、鉦(かね)、太鼓(たいこ)など、子どもたちを中心に総勢17名で行います。入覚地区の寺(安楽寺と明見寺の隔年交替)、五社八幡神社、五社八幡神社の御旅所(祭りのときに神輿が一時的に安置される場所)で演じられ、その道中でも楽を打ちながら進みます。神社だけでなく寺へも奉納するのが他の楽打ちと異なる入覚念仏楽の特徴です。
安楽寺への奉納
入覚念仏楽の特徴は、寺へ奉納することだけではありません。その名のとおり、楽の合間に念仏を唱え、言立の述べる口上の内容も諸仏にささげるものになっています。
右の写真は、入覚念仏楽で用いる鉦です。縁に三本の突起がありますが、これはもともと寺院で置いて使うための脚です。ほかの楽打ち、例えば行橋市下検地地区で行われる福岡県指定無形民俗文化財「下検地楽」で用いられる鉦には、この脚はついていません。
また、鉦には作られた年月日が銘文として刻まれています。最も古いものは「寛政三年」(1791)の銘があります。この頃には入覚念仏楽が行われていたと考えられます。念仏楽の奉納先の一つである安楽寺にも同じ形の鉦が伝わっており、こちらには「安永五年」(1776)の銘があります。これも念仏楽に使われていたのかもしれません。
200年以上前、江戸時代から伝えられた入覚念仏楽は、太平洋戦争の際に中断してしまいました。しかし昭和47年(1972)、に地元の有志によって再興されました。鉦・太鼓の音と子どもたちの声が春を華麗に彩ります。